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Vol.17 膝のスポーツ傷害[“Roo”のスポーツクリニック]

投稿日時:2007/08/23(木) 16:18

膝のスポーツ傷害は多岐にわたります。中でも膝の前十字靭帯損傷は、スポーツ傷害の中でもっともやっかいな怪我であると認識されています。前十字靭帯損傷の研究とともにスポーツ医学が発展していったと言っても決して過言ではありません。しかしながら、現在においても前十字靭帯損傷からのスポーツ復帰は約6~8ヶ月の時間を必要とし、まだまだ研究対象でもあります。
前十字靭帯損傷以外の膝関節の怪我もまた、その治癒は他の怪我に比べて長い時間が必要としています。正しい知識を持つことによって、正しい処置を行うことが出来、回復が早いばかりでなく、二次損傷(半月板や軟骨の損傷)を防ぐ事が出来ます。

今回は膝の怪我、特に靭帯損傷と半月板損傷に焦点を当て、関節の構造や受傷メカニズム、基本的なリハビリテーションの考え方、テーピングを数回に分けてみなさんに紹介したいと思います。

膝関節の解剖

膝関節は蝶番関節の大腿脛骨関節(太ももの骨と脛の骨が繋がっている関節)と滑走関節の大腿膝蓋関節(太ももの骨の上に膝のお皿が滑っている関節)の2関節から成っている関節です。基本的な機能は屈曲・伸展(脚の曲げ伸ばし)ですが、屈曲時に下腿の内外旋にも関与しています。
一見、曲げ伸ばしだけの関節と思い関節構造が簡単そうに見えるのですが、多くの筋と靭帯が存在するため、非常に複雑な関節です。したがって、怪我の治癒に時間がかかってしまうのです。

静的安定性機構と動的安定性機構によって、膝は正しい動きを行う事が出来ます。

<静的安定性機構>

online_clinic017_01.gif
(図1 膝の構造)

靭帯
・前十字靭帯(ACL)
・後十字靭帯(PCL)
・内側側副靭帯(MCL)
・外側側副靭帯(LCL)

半月板
・内側半月板→C字型
・外側半月板→O字型


<動的安定性機構>

・膝関節をまたぐ筋肉
(腓腹筋、大腿直筋、縫工筋、半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋、膝窩筋)

前十字靭帯(ACL)損傷

前十字靭帯は膝関節内にあり、後十字靭帯とクロスしています。主な機能は脛骨(すねの骨)が前方に移動するのを止めています。この靭帯は多くの感覚受容器を持っています。膝関節の靭帯の中で一番重要な靭帯です。

<ACL損傷の受傷機転>

接触型損傷
・膝の外反強制・・・タックルに入られて
・下腿(すね)の外旋強制・・・スパイクのポイントは芝生などに深く噛んでしまい

非接触型損傷
・ジャンプの着地
・急激なストップ動作
・急激な方向転換

online_clinic017_02.jpg

接触型、非接触型を問わず、受傷機転の特徴として膝関節屈曲位でのKnee in-Toe out(つま先が外側を向き、膝が内側に入ってしまう状態)があげられます。この姿勢時に過度のストレスを受けるとACL,MCL,内側半月板、すべてを同時に損傷しまいます。このことを「Unhappy Triangle」と言い、スポーツの最中に絶対にしてはいけない姿勢の一つです。一般的に、非接触型損傷が7割ぐらい占めると言われています。


<ACL損傷の特徴的な症状>

online_clinic017_03.jpg

・受傷時のPop音(破裂音)
・激しい疼痛
・腫れ
・Giving way(膝崩れ)
・膝関節の不安定感(すねが前に飛び出していってしまいそうな感覚)
・可動域制限
など


<処置>

online_clinic017_04.jpg

RICE処置を施し、専門医を受診しましょう。ニーブレスと呼ばれる固定具が手元にある場合、それを使って膝を固定しましょう(なければバンテ―ジを使って膝を固定しましょう)。また、移動の際は松葉杖を使うことをお薦めします。


ACL損傷状態でのスポーツ活動は、膝崩れを誘発し半月板や関節軟骨損傷の二次損傷を引き起こすので、避けるべきです。必ず、専門医を受診しましょう。

ACLはまれに自然治癒することがありますが、基本的に自然治癒しません。従って、手術を必要とします。スポーツ復帰には6~10ヶ月かかってしまうのが実情です。

内側側副靭帯(MCL)損傷

内側側副靭帯(MCL)は膝の内側に位置し、左右方向への安定性に大きく関与しています。

<MCL損傷の受傷機転>

online_clinic017_05.jpg

・膝を外反強制されることによって受傷。
膝の外側からタックルに入られることが、これに相当します。ラグビーにおいて発生頻度が高い怪我です。


<MCL損傷の特徴的な症状>

・受傷時のPop音(破裂音)
・激しい疼痛
・腫れ
・膝関節の不安定感(膝が内側に入ってしまいそうな感覚)
・可動域制限
など

<処置>

RICE処置を施し、専門医を受診しましょう。ニーブレスと呼ばれる固定具が手元にある場合、それを使って膝を固定しましょう(なければバンテ―ジを使って膝を固定しましょう)。また、移動の際は松葉杖を使うことをお薦めします。

MCL損傷は基本的に保存療法で進められます。スポーツ復帰は重症度にもよりますが、4~6週間を目標にリハビリテーションが進められます。
早期スポーツ復帰のためには、繰り返しになりますが可動域の確保が重要です。MCL損要の場合、膝関節の左右の安定感を得られるサポーターを装着しての可動域訓練が受傷後、3日目ぐらいから可能になります(次回、具体的なリハビリの進め方を紹介する予定です)。

後十字靭帯(PCL)損傷

後十字靭帯は膝関節内にあり、ACLとクロスしています。主な機能は脛骨(すねの骨)が後方に移動するのを止めています。

<PCL損傷の受傷機転>

online_clinic017_06.gif
(図2 PCL損傷の受傷機転)

・膝屈曲位での脛骨前面の強打(膝を強く地面に打つことで受傷。


<PCL損傷の特徴的な症状>

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(図3 Sagging Sign)

・受傷時のPop音(破裂音)
・激しい疼痛
・腫れ
・Sagging Sign(膝を90°に屈曲すると、下腿の重みで脛の骨が後方に落ち込む)
・膝関節の不安定感(すねが後ろに飛び出していってしまいそうな感覚)
・可動域制限
など


<処置>

RICE処置を施し、専門医を受診しましょう。ニーブレスと呼ばれる固定具が手元にある場合、それを使って膝を固定しましょう(なければバンテ―ジを使って膝を固定しましょう)。

PCL損傷は基本的に保存療法で進められます。2~3週間、ニーブレスにて患部固定し、腫れや炎症のコントロール、膝の安定性を得てからリハビリが開始されます。スポーツの復帰は重症度にもよりますが、3~6ヶ月を目標にリハビリが進められます。

半月板損傷

<半月板損傷の受傷機転>

・半月板損傷の受傷機転は、ACL損傷と類似…合併症
・膝関節の上下方向の圧迫固定
・膝関節の回旋(膝を捻ること)

<半月板損傷の特徴的な症状>

・引っかかり感
・疼痛
・Locking(関節内で遊離物や断裂した半月板が引っかかり、ある角度より屈曲が困難になること)
・可動域制限
など

<処置>

Rice処置を実施し、専門医を受診しましょう。バンテ―ジなどを使って膝を固定しましょう。

半月板損傷は症状(Lockingの有無など)によって、保存療法か手術の選択がされています。最近は保存療法が一般的で、経過観察後、必要に応じて手術を行うこともあります。
スポーツへの復帰は受傷度にもよりますが、6~10週間を目標にリハビリが進められます。

膝の怪我の注意

*ヒドイ腫れは、靭帯また半月板を損傷しているサインです。
*靭帯や半月板はレントゲンには基本的に写らず、MRIなどの特殊画像診断でのみ診断がされます。

これらの怪我の疑いのある場合、必ず専門医を受診しましょう。

引用
図1は財団法人日本体育協会.アスレティックトレーナーテキストⅠ.より引用しました。
図2・3は財団法人日本サッカー協会スポーツ医学委員会編.選手と指導者のためのサッカー医学.金原出版;2005より引用しました。

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