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Vol.36 バーナー症候群[“Roo”のスポーツクリニック]

投稿日時:2009/05/23(土) 19:25

バーナー症候群 

 ラグビーの試合中にタックルをして、腕に電気が走った事はありませんか? 

 多くの人が経験していると思います。これがバーナー症候群という頚部とそこから出ている腕神経叢の傷害です。 

      頚部の解剖学 

 7つの骨によって構成される脊柱の一部です。その7つの椎骨の間からは他の脊柱の骨と同様に神経が出ています。特に5番頚椎(C5)~1番胸椎(T1)の間から出ている神経は、いっしょになったり分かれたりして、主に手・腕・肩を支配しています。それらの神経の事を腕神経叢と言い、バーナー症候群で激痛はこれらの神経に由来しています。

 

・病態 

 コンタクトスポーツの激突時に上肢に電撃痛が走り、神経症状(握力低下や筋力低下)を示します。画像所見の変形は一般的に認められません(椎間孔狭小化・ヘルニアが認められる症例もある)。 

 

 一般的にC5-6神経根領域での受傷が多いと言われ、理由としてC5-6が可動域の大きい部位であることが挙げられています。 

 

 コンタクトスポーツの経験年数が長いほど発生頻度が高くなります(福井,1991)。 

・受傷機転  

 主に受傷機転は4通りあります。

図2:バーナー症候群受傷機転

①頚椎症性神経根症(椎間板ヘルニアなど変形がある場合) 

 慢性ストレスによる椎間板変性、頚椎症性変化による椎間板ヘルニア、椎間孔の狭窄が存在する上に側屈外力が加わって発症します

②椎間孔における神経根のインピンジメント 

 側屈をした時に曲げた側で神経を挟み込む事で神経根刺激症状をしめします。

③腕神経叢の過伸展による伸展損傷

衝突側と同側で肩が引き下げと頚の側屈により腕神経叢部で神経が伸張されて、神経根症状を示します。

④直達外力による腕神経叢損傷

タックル、ホッケーのスティックなどによる、腕神経叢への直達外力による神経根障害(鎖骨と第1肋骨に腕神経叢が挟まれて)を示します。

・重症度分類(Clancyら)

重症度はClacyらによって分類が一般的である。 

 

Grade1

 

 

受傷直後数分で知覚運動障害が改善し、2週間以内に完全に症状が回復する

 

 

Grade2

 

 

三角筋、上腕二頭筋、棘上筋、棘下筋の筋力低下が数週間~数ヶ月持続する

 

 

Grade3

 

 

筋力低下、知覚障害が1年以上残存

 

スポーツ傷害 NEW MOOK 整形外科 No.3 金原出版 1998より引用

・診断方法

知覚 

筋力検査 

 反射 

スペシャルテスト(理学所見)

スパーリングテスト

ジャクソンテスト  など

これらの方法で行われます。 

 

試合や練習の継続が可能かどうかは、主に筋力検査で判断します。

図3:筋力検査

・神経支配と筋 

 

 

 

症状部位

 

 

筋力低下

 

 

C4

 

 

頚部から肩

 

 

 

 

C5

 

 

肩から上腕外側

 

 

三角筋、棘下筋、上腕二頭筋

 

 

C6

 

 

前腕外側から母指

 

 

腕橈骨筋、橈側手根伸筋

 

 

C7

 

 

示指、中指

 

 

橈側手根屈筋、総指伸筋

 

 

C8

 

 

環指、小指

 

 

母指、総指屈筋、橈側手根屈筋、環・小指の深指屈筋

 

 

T1

 

 

手、前腕尺側

 

 

示指、中指の深指屈筋、長母指屈筋

 

 

・予後

予後は良好です。重症例においても95%でスポーツ復帰しています(Bergfeld 1988) 

・治療 

 

 安静(場合によってはカラーで固定→カラー固定は頚部の筋力低下を促進するので数日でやめます) 

  ステロイドの内服、注射→痺れが強い場合 

  症状が消えず、ヘルニアがある場合→手術が必要になる場合があります

・スポーツ現場での対処方法

①声をかけ意識の確認 

 ②動かす前に、自分で上肢・下肢を動かせるか確認 

 (脊髄損傷有無のスクリーニング→もし陽性の場合、救急車の要請・スパインボードで搬送 

 ③自分で起き上がるように指示、その他の筋活動、神経症状の確認 

 ④痺れが消えて、正常なROMならすぐに競技復帰 

 ⑤症状がまだみられる場合、交代し安静

(必要なら、510分おきに症状の回復の有無を確認) 

・バーナー症候群の予防方法 

     タックル、ブロック、スクラム、ブレークダウンなどのコンタクトプレイにおける医学的に安全なプレイ技術の習得 

     医学的に安全な頚部の位置を保ち、コンタクトプレイを行うのに十分な頚部を中心とした体幹、腰、骨盤、下肢などの筋力強化 

     メディカルチェックによる画像診断と形態チェックでの医学的側面からの安全対策 

     必要であれば、ルール変更→良い例がアメリカンフットボールのスピアリング・タックルの禁止                                                                           (阿部 1999

 

参考・引用文献

図1:学生版 ネッター解剖学図譜 第2.丸善株式会社.2002より引用

図2:阿部均.バーナー症候群 発症メカニズムとその予防・再発予防.臨床スポーツ医学. 2008;25(臨時増刊号).63-69より引用 

 図3:Sandra J. Shultz,Peggy A.Houglum,David H.Perrin.Assessment of Athletic Injuries.Human Kinetics.2000より引用 

 福井尚志.スポーツによる頚部神経根、腕神経叢損傷.臨床スポーツ医学.1991;8(9).981-985 下條仁士.バーナー症候群.臨床スポーツ医学.1998;15(9).1015-1019

 スポーツ傷害 NEW MOOK 整形外科 No.3 金原出版 1998

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