後藤禎和 『緊張・継承・創造』

Vol.5 激動の春、進むべき道―投稿日時:2012/07/04(水) 22:00

 

  覇権奪回、将来の社会的リーダーとなることを掲げ、2月にその歩みをスタートさせた『後藤ワセダ』。時に苦しみも味わいながら、チーム一丸、心ひとつに、一気にこの春を駆け抜けた。


 ギラギラ感溢れるなか残された成果は、近年の記憶にはないSr、Jr、Co全チーム勝利。果たして、その強さはホンモノなのか。プランに照らし合わし見えてきたものとは…。指揮官・後藤禎和が語る、この春の足跡、拓かれつつあるワセダの未来―

 





後藤禎和 『緊張・継承・創造 Vol.5 』

編集・疋田拡



 



―お久しぶりになりますが、まずあれからの一ヶ月半、ワセダにとってはどんな時間だったのでしょう




  んー、3歩進んで2歩下がる(笑)





―それでも、一歩ずつは前進できていたと




  そうね。Aチームだけではなくて、上から下まで全体が充実していたんじゃないかな





―どういった点に「充実」、一歩進んだ感を抱いていたのでしょうか




  例えば、初期の頃の早明戦(5月13日)で出ていたようなディフェンスの課題をその後修正して、6月頭の高麗大戦なんかでは、その成果がいい形で出たりとか、アタック面で前に前に仕掛けていこうという部分は、どの相手に対しても、特に一次の精度は着実に上がっていた。


 じゃあ、そこができているから今度は二次の精度を上げていこうというように、少しずつ前進できていたんだけども……、最後の東海大戦なんかでボロが出たというか、進めていたと思っていたディフェンスでも、ちょっと向こうのレベルが上がると精度が途端に低くなったり。そこが2歩下がると言った部分。そんなところかな

 




―その東海大戦を改めて振り返って頂くと



  まぁ大枠で言うと、東海だけではなくて、最後のリーグ戦との3つの試合(流通経済大、大東大、東海大)は、基本的には相手が同じような戦術、戦略で、これは分からないけれど、対ワセダ対策をしっかり準備してきたように受け止めています。恐らく、秋の本番でも、どのチームもこういう戦い方を仕掛けてくるだろうということが明確になったので、夏以降やることがハッキリしましたね




―最後の最後に逆転サヨナラ勝ち。ああいったゲームになってしまった要因は




  基本的には、ミスとペナルティ。もちろん相手も強かったけど、自分たちから崩れていった要素が大きかった




―終盤はどういった思いで見ていたのでしょうか。負けてもおかしくない展開ではありました




  んー、これは別に負け惜しみでもなんでもなくて、春の全勝なんて全然というか、それほど拘っていた訳ではないからね。負けを少しは覚悟したところはあったけれど(笑)。ただ、向こうも同じようなミスなりをして、ずっと2チャンス以内できていたから、まぁ最後に取られてもう一本取った時点(75分、36-38)でいけるかなって予感は持てた。


 取られた瞬間もうダメだと思うんだけど(笑)、その後すぐ取れていたからね。2チャンス以内ならいける予感は十分あったかな

 




―終盤はモールに拘っているように見えましたが、あの選択についてはどう見ていたのでしょう。勝つにはあれしかないの現実的なグッドチョイスだったのか、それとも…



  この間の時点、現時点でああいう展開になったら、あそこに頼るのは致し方ないんじゃないかな。だから、いい選択であったと思う。実際、あの試合でも取れていたからね





―東海大戦に至るまでのところでも、モールでトライを重ねていましたが、これは大きな武器になっていると見ていいのでしょうか




  なっているね、スクラム以上に。だから、これに頼りっぱなしになるのではなくて、じゃあ相手がモールを抑えるためにディフェンスが寄ってきたところで、どう仕留めるか。そこの精度まで、夏の段階でレベルアップしていきたいね。BKのメンタリティとして、そこばかりに頼ってしまうのはなくしたいかな、少なくとも





―前回の段階では、まだ評価に値しないと言われていたモールディフェンスに関しては。色々と駆け引きしているのが印象的でした




  そもそもなぜモールを武器にするのかというと、現行ルールだと圧倒的にアタック側が有利だから。これは俺の持論だけど、どんなにがんばっても5回ゴール前でモールディフェンスの機会があったら1回くらいは必ず取られる。まさにこの間の試合はそうで、レフリングの解釈もあるけど、止められるところはしっかり止めていたからね

 



―試合後、学生たちにはどんな言葉を



  収穫は最後の10分だけだよって。課題が明確になった分、7月からまたがんばってくださいって(笑)




―試合を通して近場で喰い込まれ続けていましたが、そこの対応はどのように見ていたのでしょう




  まぁだから、体をちょっとは大きくしたとはいえ、東海や帝京と比べると、劣勢になるのは分かっていたことであって、じゃあ1対1で劣勢な分どこでカバーするのかというと、数とスピードになってくる。その両方の意識が淡泊すぎたね。特にディフェンスの面では





―タックルそのものがどうというより、足りなかったのはその意識の部分だと




  要は2人目、3人目のところ。特に2人目の意識が希薄で、淡泊すぎた

 



―つられるようにBKもいかれていましたが、やはり内側のところが根本要因になるのでしょうか。内側に立てないところから始まる悪循環



  要はゲインをされて、精神的に浮足立った状態で、そんなにピンチではないのに、慌てて自分たちでギャップを作って、傷を大きくしてしまう。それの繰り返し。大きくゲインされて、ペナルティをして、ゴール前。まったくこれの繰り返しだったからね。


 まぁ、切羽詰まったところで出せないスキルはレベルじゃないってこと。そういう意味でボロが出た。落ち着いた状態であれば、十分止められるシチュエーションだったから

 




―先ほどチラッと口にされましたが、東海大戦を見るに、帝京大などもあの戦い方を徹底的に挑んでくるように思います。対ワセダ勝利への近道



  まぁだから、ああいうラグビーを突き詰めていくと、強かったときの関東だったり、更に極端に突き詰めていくと昨年までの帝京になる。ワセダが打ち破らなければならないのは、ああいうスタイルで、それより遥かにレベルが高いイメージですね





―春終わりの段階で、ディフェンスの安定をある程度のレベルまでに上げておきたいと言われていましたが、まだまだという評価になるのでしょうか




  そんなことはないんじゃないかな。段階的にいくならば、システムの理解であるとか、そういったところはだいぶできているはずだからね。あとは、ディフェンスというよりも、タックルの局面のところの精度だから、そもそも今回いかれていたのは




―アタックではボールを動かせませんでした




  そもそもマイボールがなかったからね。これも相手の戦術というか、戦略。向こうは絶対にボールを渡さないとやってきているなかで、少ないチャンスであっさりミスしたり、蹴り返したりしてたら、そりゃボールは動きませんよ
 

 

 


―カウンターにいかなかった場面は、その象徴?



  んー、そこは大いに不満だったね。カウンターのチャンスは一回しかなかったけど(笑)

 



―春中盤以降、一次の精度が上がっているように映っていましたが、手応えとしてはいかがでしょう



  見ていてゲインは確実に到達しているし、超えていた。そこの一次の球出しが早いときには、いい展開に確実に繋がっているからね。あとは二次のセットの早さ、アタックの精度、サポートの精度。もちろん、一次のブレイクダウンもまだまだなんだけど。こいつがいるときは出るけど、こいつがいなかったときは出ない、みたいなことがあるから、そういったところかな




―「走り勝つ」についてもやっぱり…




  これもそういった展開に持ち込めていないからさ。ボールを相手に支配されてしまって





―ただ、東海大戦しかり、80分足は動き続けているように見えます




  まぁ、後半最後の10分であれだけやれるのは、練習の成果だろうね

 




―5月の段階では、妥協せず厳しい練習を課すと言われてましたが、その後の手綱は



  別に追いこんではないけど(笑)、さほど緩めてはない。まぁ、トップリーグとの合同練習(NTT、サントリー)もあったし。先に生きるというか、この時期調整しても意味がないからね。7月に十分休めるし




―トップリーグの話が出ましたが、スクラム練習がメインでした。前回の段階では分からないと言われていたスクラムの評価はいかがでしょう




  これも…個人個人の問題になってきているのかなと。そんな気がしてます。全体としてスクラムのボトムアップというのは確実にできてはいるけど、そこから先、本当に強い相手を押しきるところになると、個人の問題になったり





―先日のサントリー練などでは、押したという手応えがあったようですが




  トップリーグ相手にもしっかり組めているね。2,3年前の対社会人の合同練習と比べると、全然違う状況だと思うよ




―春は体を大きくするところから始まり、一定の成果を得ましたが、現在は…




  これだけ毎週試合が続いたら落ちるのはしょうがない、落ちてしかるべきなんだけど、にしても落ち過ぎだろという人間はいるね。そもそもそれほど上がってない奴が大きく落ちたりしてるから…。まぁ、体質もあるんだろうけど。ただ、時期的には練習の強度、質、量を上げる時期なので、そこはある程度はしょうがない

 




―改めて、春の最後に東海大と戦っての想いは。これまで見えていなかったものが見えたり、この先が描けたり…



  さっきの繰り返しになるけど、相手がワセダに対してどうやって戦ってくるのかというのが、監督の立場として明確になった、腑に落ちた。と、いうところで、じゃあこれから何を準備しなければならないのか、どこをテコ入れしなければならないのか。俺の頭のなかではハッキリしたね。こちらは、まったくと言っていいのかな、何の対策もせずに試合に臨んでいたから

 




―もし負けていたら、空気、プラン、過ごし方、諸々色々変わったのでしょうか



  終わってみないと分からないなぁ、そこは




―現在は一週間のオフですが、オフ明けから夏合宿までの過ごし方は




  基本的には3月の、春シーズン前の最初の繰り返しになりますね。まず体を大きくする。そして、基本スキルの再構築ということになるんだけど、基本の部分はもう少しユニット間の連携になるかな




―春先は基本スキルの向上を掲げていましたが、現時点での評価は




  んー、継続は力なりなんだけど、やっぱり試合期になってポジ練にかける時間がなかなか取れない、あるいはおろそかになったりした部分があって、精度が落ちているなと感じる部分はあるね
 

 




―春シーズンを通して、学生たちの変化を感じた部分はありますか。学生たちに求めると言われていた「自立」も含めて



  まぁ、最後の試合で崩れきらなかったというのは、多少はタフになってるんじゃないかなって。自分たちで色々声掛けて、こうしよう、ああしようとやっていた感じ……する?(笑)




―試合中ちょっとおとなしい気はしました。特にBKは




  BKはね…。でも、徐々に自分たちで考えて行動できるようにはなっているのかなぁ。何と比較して、どこと比較してというのが難しいんだけど、以前の彼らと比較してなら、よくなっているとは思う





―春シーズンの満足度は~と問われたら




  満足はしないタイプ、できないタイプなので(笑)、まったくしてませんね




―春シーズンを終えて、後藤さん自身に感じる変化などはあるのでしょうか。ラグビー観が変わったりだとか、自分にこんな一面があったのかとか…




  ラグビー観が変わるってことはないだろうね。でも、歳取ったかな(笑)。これは監督になったからとかではないんだけど。10年前というか、コーチになった頃に比べると動けないし(笑)、あちこち痛いし…(笑)。そういう意味では、俺自身のコーチングの仕方も、監督になったから、今年になってからということではないけど、だいぶ変わってきてるんだろうなと。具体的にどうこうというのは、うまく説明できないんだけど

 



―春シーズンが終わるときには、チームとして迷いなく自信を持ってプレーできるように、SOがしっかりイニシアチブを取ってコントロールするところまで持っていきたいと話されていましたが、実際その部分の感触は



  まだまだだなぁ…。吉井にしても、 森田にしてもね。声が聞こえてこないからなぁ。そこなんじゃないかな、さっきのBKから声が聞こえてこないというのは

 



―ここは根気よく~でしょうか



  まぁ、小倉が帰ってきてどうなるのか。あいつは声だけは出すからね(笑)。そこもキャラクター。当然声を出すというのは、俺のなかで大事なスキル、評価の対象、要素になってくる。それが出せない、ゲームコントロールできないというのは、SOとしての評価は下がるよ




―この春はBチームに充実を感じました。すべてのゲームで圧倒的勝利




  練習していても、やっぱり強いんだよね。だからAとやっている練習の成果が最大に出ているのがBなのかなって。逆にAは少し落ちる相手とやっているから、しんどい局面であたふたしてしまう。Bはしんどい局面の経験を普段からしていて、Aはしていないから本番でそういう局面になったときに、あたふたしてしまう。そういうところなのかなって




―実際には、AとBの差はかなりあると




  そこの差はもちろんあるよ。当然序列つけているからね(笑)。でも、当初ほどの大きな差はなくなっているかな。Aチームにはタイトな局面を練習から意図的に作っていこうと思います
 

 




―若いメンバーに任せたジュニア、コルツに対する評価は。こちらも全勝です



  結果が出ているということは、評価していいんじゃないかな。特にメイジ、東海相手に上から下まですべて勝ったのは、評価できると思うよ




―上から下まで、みなギラギラしているように感じました




  クソだね(笑)。なんて、まぁいいんじゃない(笑)。昔のことすぐ忘れちゃうから、実際昨年と比べてどうかと言われると、俺にはよく分からないかな





―叩き上げの選手が上で活躍する文化を~という話を就任時にされましたが、パッと思い浮かぶだけでもかなりの選手が上で活躍しています




  大瀧(プロップ)なんかは叩き上げだね。本当の意味の叩き上げ。すっげぇ弱かったから(笑)、入学した瞬間は。いいんじゃないかな。いいことだと思うよ

 



―遠くを見て~と言われていた1年生も、徐々に頭角を現しているというか、随所に成長を感じます



  これもよくなってるね、確実に。だから全体的にはうまく進んでいるというか、相対的にはうまく進んでいるかなと





―上田竜太郎のキャプテンシーについてはいかがでしょう。初戦の段階では、そこにあまり興味を持って見ていなかったと話されていましたが




  今もそこがどうこうという視点では見てないけど…(笑)、でも前回も言ったと思うけど、みんな頼っているんじゃないかな。それはいい面でもあるし、昨年の(山下)昂大もそうだけど、あまりひとりに頼りすぎるのはよくないから、そこがどうかだね

 




―この春は新たな試みである交流戦もあり、毎週試合が続きました。学生たちにはそれを乗り越える意識、習慣を身につけてほしいと話されていましたが、その点に対する評価は



  何だかんだでケガ人はでてしまったけれど、最後までやり通した奴を見ていると、そんなに疲弊もしていないし、バテてもないし、まぁまぁよかったんじゃないかな

 




―ケガといえば、ラグビー界でもっとも注目を集めていた藤田慶和が、同大と招待試合で負傷し、先日手術を受けました



  ケガしてしまったものはしょうがない。そもそも11月いっぱいまではいないと覚悟していたから、そういった面ではいいんだけど、彼自身の競技人生において、この年齢でのこのケガというのはね。うまくこの1年を財産にできればいいんだけど。マイナスになるようなことは絶対にしてはいけないと思っています。チームとして




―やるべきことが見えたと言われていましたが、夏合宿のイメージを言葉にして頂くと




  相手がこちらにボールを渡さないラグビーをしてきたときに、それをどうやって取り返すか。取り返すためのトレーニング。そしてアタックは、今やっていることに更に積み上げていって、いくつか新しい要素を加えていく感じです

 




―春中盤の段階では、いいスタートを切ったように見えても、チーム作りの進行度が早まることはなく、やはり予定通り~という話をされていましたが、終盤から夏も変わりませんか



  試合期に入った段階で、試合をこなしていくためのタフネス養成というところだったからね。その時点で、そんなに大きく、新しいスキルが劇的に伸びるなんてことは期待してなかった。むしろ、最後の東海戦をあれだけケガ人が出たなかで乗り切ったというのは、チーム全体の底上げという面でいくと、当初の想定よりいい方向にいっていたかな。東海戦、DチームのCTBはSHだったからね




―年間プランから逆算していったときの夏合宿の位置づけは




  基本的にはチーム練習。今年どうやって戦っていくのかを、春もそうではあるんだけど、もう少し具体化したところまで落とし込んで、それをある程度のレベルまで完成させる
 

 




―夏合宿では8月26日、ついに帝京大と対戦します



  何とか帝京にチャレンジできるところまで辿り着けたかな。チャレンジする立場だから、基本的には楽しみだね


 *8月25日CDE、26日ABと、初の5連戦を予定。他、Aチームは19日に慶大と対戦



―今年のチームはこうやって勝つんだという姿、あり方はだいぶ描けてきているのでしょうか




  んー、最後の試合で、まだまだだと課題を突き付けられたので、夏合宿でそれを克服できたときに…、まぁそれを試すのが帝京戦になるんだけど、そのときまでは分からない。今日の段階、今の時点では分からないね





―本業のワセダクラブの業務の方は…




  大変で発狂しそうですよ(笑)。この春はルーティンをこなすのに精一杯でしたね

 




―最後に支えてくださる皆さんに伝えたいことがあれば



  夏の菅平の帝京戦はもちろんですが、北風祭に是非いらしてください。今年はたくさんのOBに集まってもらいたいということで、OB戦を企画しました。あとはちびっ子との交流。演芸もマンネリしたところがあるので、ちょっと変わったようにして皆さんとの距離を近づけたいと思っています。是非上井草に来て、学生たちに声を掛けてあげてください
 

<ワセダクラブ事務所にて 春シーズンを終えて>

 

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